2012/03/20

最近読んだ本(10) - 「ストーリー・セラー」「魔法使いの弟子たち」

『ストーリー・セラー』(Click New Tab)
有川浩

有川さんの、登場人物が人に抱く心理描写が好きです。
からっとした性格はあくまで気持ち良く、うまく生きている人が清々しいと感じます。

本作は、2作品をまとめた形で収められていて、作中作やこの本自体を話題に載せているような会話があって、実際にはそういう事もないとわかっていても、現実にわずかに気持ちがリンクして、それが現実投影した時の想像を掻き立てて、感情移入していまいます。泣きますw

ラストには、これも作中作でした的な、結末は想像に委ねますという締め方をしていて、どうなったのかは書かれたような書かれてないような曖昧な終わりをしています。
ただ、作中作(?)でひとつのストーリーはすでに書かれているので、当然のように、もう一方と思えるストーリーを想像して、希望を感じることができました。


本文中、小説を読んだ感想として「卑怯だ」というセリフがあるのですが、それこそこの本に言いたいですね。

個人的な趣向の問題ですが、どうも「ただ普通に暮らしたいだけなのに、そのようにいかない。」的な流れは涙腺にくるようで、同じような感想をもったものに「カールじいさんの空飛ぶ家」があります。あれは、もっとずいずいとその流れでしたけど・・・。

普通に暮らしたい、ようやくそうなってきたかなという流れの中で、不安要素が持ち上がる。そして、お互いが素晴らしくポジティブに心配りをしながら必死で生きているのに、状況はそれを蝕んでいく。

あぁ、もうダメだという感じです。涙腺がたがたです。

そして、最後の締め方。
作品内で書かれていないストーリーを想像するからこそ、自分の思い描きたい結末を想像することが出来て救われる。作品内では、悲劇的展開ながら優しさがあるから、想像するストーリーもこれ以上ないくらい優しくなる。自分でもストーリーを描くから、よりこの作品を読み込みたくなる。

あぁ、卑怯だw


『魔法使いの弟子たち』 (Click New Tab)
井上夢人


良い悪いに関係なく、まさかのラストでした。

山梨の病院で起こったウィルスの院内感染をいう設定で始まる長編小説です。

読み始めからしばらくのページでは未知のウィルスによるバイオハザードを扱ったSF小説かと思っていましたが、途中からはSFの意味合いが少し変わってきます。

まさかの後遺症から第2部という感じで、さらにテレビが関わりだして、話はどんどん特撮めいた雰囲気に。何時間もかけて一気読みしたくせにと思いながらも、ついついif系のパンデミック狂乱のままのストーリーも読みたかったのになと思うあたり身勝手ですw


そんなふうに「どうなるか?」ではなく、「どう収めるのか?」を期待しつつ読むもので、余計にラストは良い悪いではなく・・・となります。

猿が出てきたあたりで、もういいかって気分になりかけます。
文章的なハマり感と、ストーリー的な諦めが天秤にのる感じです。

面白いんだけど、設定のあらすじから期待した舞台がどんどん遠くなるのが、これじゃない感を呼ぶといいますか。この辺りは、読んだ時の気分次第なところもあるので、タイミングが悪かっただけとも思いますけど。

それにしても、なんで2人がウィルスから生き残ったのかの突き詰めは、最後の最後までもなかったような気がします。それも知りたかったな。
偶然で片付けようとするにはご都合主義すぎる気がして気になりました。

今編集用にWikiで検索かけて気付いたんですが、井上夢人さんって元々は岡嶋二人のペンネームで活動されていた方なんですね。
あれ?・・でも、岡嶋二人って、ずっと知ってる名前なのに、作品一覧見ても、読んだ記憶のある本がなかった。。おかしいなぁ。




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